(4)住宅の不同沈下障害の損傷形態 |
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不同沈下による代表的な損傷は以下の通りです。
これは「変形傾斜」による損傷で、地盤が沈下することにより地盤に直接設置されたものの損傷や、沈下により軸組みが変形して損傷が生ずる様子が良くわかります。内壁亀裂、タイルの損傷等は思いのほか発生率が少ないようです。
建物の損傷に関する詳しい情報「近接掘削工事に起因する戸建住宅の基礎の障害について」
→ユーザーサイト(論文集)をご覧下さい。(利用者登録が必要です)
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不同沈下による損傷ベスト10
順位 |
損 傷 形 態 |
1 |
ブロック塀等の損傷 |
2 |
建物の傾斜及び部分的な沈下 |
3 |
コンクリート舗床等の損傷 |
4 |
建具の建付不良又は開閉不良 |
5 |
外壁(左官)の亀裂 |
6 |
基礎の沈下又は亀裂 |
7 |
内壁の散りきれ |
8 |
床束等の沈下による床の緩み |
9 |
内部土間コンクリートの損傷 |
10 |
内壁及び天井(左官)の亀裂または崩落 |
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(5)沈下傾斜とその程度 |
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沈下量の測定結果から概ねの障害程度を判断する事ができます。
沈下障害である場合は、測定結果と障害程度が一致している事を確認する必要があります。また、沈下傾斜とその程度は「変形傾斜」と「剛体傾斜」を個別に考える必要があります。
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【変形傾斜】 |
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木造建築物の変形角θ2と損傷程度の関係
変形角 |
損傷程度 |
区分
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2/1000 rad
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損傷が明らかでない範囲 |
1
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2〜3/1000 rad
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建付と内外壁の損傷が5割を超え損傷発生が目立つ.内外壁の損傷は0.5o程度,建付隙間3o程度,木工仕口隙間2o以下 |
2
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3〜5/1000 rad
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損傷程度が著しくなる.基礎亀裂の拡大傾向が見られ,無筋基礎,内外壁の損傷が0.5o程度,建付隙間5o程度,木工仕口隙間が2oを超える. |
3 |
5〜8/1000 rad |
多くの損傷発生が5割を超え顕著.有筋基礎でも多くの建物で0.5oを超える亀裂,内外壁の損傷は1o,建付隙間は10oを超え,木工仕口隙間4o程度以上となる. |
4
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8〜12/1000 rad |
損傷程度はさらに著しくなるが損傷発生率は頭打ち塑性的傾向を示す.有筋基礎でも1o程度の亀裂,内外壁の損傷2o程度,建付隙間15o程度,木工仕口隙間5o程度程度となる |
5
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日本建築学会「小規模建築物基礎設計指針」より |
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【剛体傾斜】 |
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傾斜角と機能的な障害程度の関係
傾斜角 |
障害程度 |
区分 |
3/1000rad未満 |
測定誤差や施工誤差を含む範囲
品確法技術的基準レベル-1相当
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1 |
4/1000rad |
不具合が見られる
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2 |
5/1000rad |
不同沈下を意識する
水はけが悪くなる
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6/1000rad |
品確法技術的基準レベル-3相当。
不同沈下を強く意識し申し立てが急増する.
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3
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7/1000rad |
建具が自然に動くのが顕著に見られる
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8/1000rad |
殆どの建物で建具が自然に動く
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4
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15/1000rad |
配水管の逆勾配
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17/1000rad |
生理的な限界値 |
5 |
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日本建築学会「小規模建築物基礎設計指針」より |
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【建物の構造部の矯正が必要となるレベル】 |
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建物の構造部矯正(沈下修正)の必要性の判断は、沈下傾斜等の測定結果と共に、不具合状況等を総合的に判断するべきですが、変形や傾斜角については以下の値を許容レベルと考えます。許容レベルは建物の仕様や経年程度、使用状況等により上限〜下限の値を弾力的に考慮すべきものと思われます。 |
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小規模建築物の傾斜角と変形角の限界値
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下限 |
標準 |
上限 |
傾斜角 |
4/1000rad |
6〜8/1000rad |
− |
変形角θ2 |
5/1000rad |
5/1000rad |
8/1000rad |
下限:一部(概ね2割程度)の建物で著しい不具合が見られるレベル
標準:多くの(5割を超える程度)の建物で著しい不具合が見られるレベル
上限:大部分の(概ね7割程度)の建物で著しい不具合が見られるレベル
「沈下修正の要否判定」に関する詳しい情報→ユーザーサイト(利用者登録が必要です) |
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(6)沈下測定について |
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沈下測定と言うと一般的には機械レベルによる水準測量を行いますが、当所では以下の理由から水盛管による内部の床面での測定を勧めます。 |
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【水盛管測定の利点】 |
- 特に重要なのは「現状の傾斜程度」でありレベルによる外部での測定では十分に把握できない。
- 傾斜程度が実質的に問題となるのは、内部床面での傾斜である。
- 問題となるのは絶対沈下量ではなく不同沈下量である。
- 傾斜角と変形角を把握するのに都合が良い。
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レベルと水盛管を併用するのが理想的ですが、どちらか一方を行う場合では水盛管による測定を行いましょう。
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(7)基礎のひび割れ |
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基礎や壁に入る亀裂をクラックとかひび割れと言いますが、どれも基本的には同じです。
建築では主にひび割れに統一しているようです。(事業損失業界では亀裂とするケースが多いようです)ここではひび割れと表記する事にします。
これまでのように、不同沈下障害で損傷が発生するのは変形傾斜した場合で、この時には必ず基礎のひび割れが生じています。障害程度は基礎のひび割れ程度によるので、沈下障害を調べるには基礎のひび割れを調査する事が重要です。
また、基礎コンクリートは、その他にも下記のような原因によってひび割れは生じます。特にコンクリートは打設後、硬化と伴に収縮するので、これによる収縮クラックの発生はコンクリートの宿命とも言えます。ある程度の収縮クラックは避けられないのですが、これも程度問題で、程度が悪ければ問題となります。 |
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【基礎のひび割れの原因】 |
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・設計施工に起因する (配筋不足による剛性不足・コンクリートの被り圧が少ない等)
・コンクリートの材質に起因するもの (水セメント比が高い等)
・打設後の養生不良によるもの (寒冷期の打設・型枠の早期撤去等)
・外的要因による (養生中の振動や地震外力等)
・不同沈下など応力集中による変形
・経年劣化による耐力低下
・配筋不足による剛性不足
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(8)基礎のひび割れが何故いけないのか? |
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コンクリートにひび割れが入ると、チーズを割るように、すぐちぎれてしまうように思う人もいますが、そうでは有りません。鉄筋コンクリートは一般に、引張力を鉄筋が負担し、圧縮力をコンクリート</b>が負担します。不同沈下時の基礎は、上側の引張力に対して鉄筋が頑張っているのです。だから鉄筋コンクリート基礎は不同沈下に有利なのです。鉄筋コンクリートの基礎でも、コンクリートにひび割れが生ずるとこんな問題があります。 |
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【鉄筋コンクリートがひび割れる事の問題点】 |
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1.ひび割れから水分が浸入し鉄筋を錆びさせる
2.ひび割れから炭酸ガスが浸入しコンクリートの中性化を促進させる→鉄筋が錆びやすい
3.ひび割れが進むと鉄筋の拘束力が低下する。
4.コンクリート強度の低下
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【ひび割れによる悪循環】 |
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ひび割れにより鉄筋が錆びる
↓
錆びて膨張する事によりコンクリートを押し広げ
↓
さらにひび割れしてまた鉄筋が錆びる
↓
そして急激に強度低下する
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ひび割れに関しては程度問題ですか、エポキシ樹脂などでひび割れ箇所を一体化させ、水分や炭酸ガスの浸入を防ぐ事が有効的です。
※基礎の補修に関する情報→「戸建住宅基礎の修復方法の現状について」
ユーザーサイト(論文集)をご覧下さい。(利用者登録が必要です)
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(9)基礎のひび割れの評価 |
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ひび割れの程度について評価する場合、まず「ひび割れが進行していない」ことが大前提です。地盤沈下が生じている場合、粘性土地盤では圧密沈下が生じ長期間にわたって沈下が進行する場合がありますから、注意を要します。ひび割れ測定を追跡調査(出来れば半年以上)して、ひび割れの進行が無い事を確認しましょう。ひび割れの程度は主にその幅によって下表のように評価できます。 |
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ひび割れ幅とその程度
0.2o未満 |
特に支障が生じないレベル |
0.2o |
漏水を許せない箇所の許容レベル |
0.3o以上 |
一般部で何らかの対応が必要なレベル |
0.5o以上 |
問題となるレベル |
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