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事業損失の豆知識
(1)事業損失とは?
(2)事業損失の種類と処理状況
(3)事業損失の処理
(4)事業損失の考え方
(5)事業損失と損害賠償
(1)事業損失とは?
事業損失とは、公共事業の施工により発生する不可避的な不利益、損失または損害で、事業を施工する起業地内の損失(土地収用や建物の移転等)を除外した損失をいい、事業損失は反射的な利益や直接的な身体障害等は含まないものとされています。

具体的には公共事業の施工による地盤変動・騒音・振動・日照阻害等による不利益、損失又は損害をいい、国や地方公共団体が第三者に対して与えた損害のことをいいます。

このように言葉だけ捕らえると、事業そのものの損失というようにも捕らえられますが、建物の被害や日照阻害・電波障害・井戸の枯渇など他人の財産等に生じる損害の事です。

[事業損失として扱うもの]

・地盤変動や工事振動による建物等の損傷
・工事振動や騒音による生活環境及び家畜等への影響
・地下水の汚濁や枯渇による農業用水や飲料水、家畜、養魚などへの影響
・構築物によるテレビ等の受信障害や日陰の問題
・etc


[事業損失として扱わないもの]

・家賃減収や営業収益減収などの間接的影響
・精神的損害等に関する慰謝料等、無形的な損害
・etc
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(2)事業損失の種類と処理状況

公表されている資料(月刊「用地ジャーナル」)を基に、事業損失補償の処理状況の概要について紹介いたします。

【事業損失の種類】
事業損失は被害の発生要因別に「工事・交通振動、工事・交通騒音、水枯渇、水汚濁、地盤変動、電波障害、日照阻害」の7類型に分類されます。各類型別の処理件数は以下のとおりです。
【事業損失の処理状況】
電波障害や水(井戸)枯渇は、一旦、被害が発生すると件数が多くなりますが、比較的身近な被害は工事振動や地盤変動による建物等の被害で、この2つで処理件数の過半を占めます。以下は平成14年度から過去5年間の被補償者数と1件当りの補償額をまとめたものです。被補償者5000人弱、一人当たりの補償額は地盤変動で約170万円(平成14年度)です。但し、これは市町村レベルの工事によるものや民間工事は含まれていませんので、建設工事による被害全体はこの数倍になると思われます。
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(3)事業損失の処理
事業損失はあくまで行政側の処理上の言葉で、事業損失の類型ごとに「事務処理要領」を定めて、補償の手続きを決めていますが、これは法律ではありません。これはあくまでも「うちの役所ではこんな場合、ここまでの手続きで補償できる」といったもので、民法(損害賠償)の規定とは違います。ですから、事業損失では「補償」と呼ばずに正確には「費用負担」と呼びます。

この事務処理要領では

   1.対象となる損失

   2.因果関係を把握するための調査

   3.受忍の範囲等と費用負担の要件

   4.費用負担の原則と算定方法

   5.その他、費用負担の方法や時期

  などについて定めています。

    【制定されている事務処理要領】

「公共事業に係る工事の施工に起因する地盤変動により生じた建物の損害等に係る事務処理要領」(S61.4.1)
「公共施設の設置に起因する日陰により生ずる損害等に係る費用負担について」(S51.2.23)
「公共施設の設置に起因するテレビジョン電波受信障害により生ずる損害等に係る費用負担について」(S54.10.12)
「公共事業に係る工事の施工に起因する水枯渇等により生ずる損害等に係る事務処理要領」(S59.3.31)

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(4)事業損失の考え方
事業損失における補償の考え方は、「受忍の範囲を超える損害等が生じた場合、損害等を填補するために必要な最小限度の費用を負担することが出来る」としています。
具体的には、建物や工作物等の損傷であればその程度に応じて

   1.建物等の損傷箇所を修復する
   2.建物等の構造部を矯正して損傷箇所を修復する
   3.建物等を復元(建替)する
    などのいずれかの方法に要する費用を負担できるとされています。
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(5)事業損失と損害賠償

このように損害賠償は民法の規定で有るのに対して、事業損失は単なる行政側の手続き規定です。

でも、実態はほとんど損害賠償に近いもので、「どのみち賠償しなければならないような損害を与えたのであれば、先に費用負担しましょう」といったものです。ですから事業損失で救われなくとも、別途、損害賠償の請求を行う事が出来ます。

損害賠償と事業損失の大きな相違点を以下に示しました。

 

対象となる損害

先にも述べた通り、事業損失では無形的な損害は対象としませんが、損害賠償請求では慰謝料等の請求が認められるように、民法上では広く法律上保護されるべき利益で、損害の有形無形を問いません。逆に事業損失では、交通騒音の防音工事や電波障害における有線施設の設置のように、損害の起こる前に補償(費用負担)出来ることが特徴です。(損害賠償では「損害の発生」が不法行為の成立要件ですので、損害の発生以前に賠償請求をすることは出来ません。)

挙証(立証)責任

事業損失では被害者救済の立場から損害の発生や因果関係の立証は起業者側が行うのに対して、損害賠償では被害者側に挙証責任があるので、賠償を認めさせるには実際はかなり厳しいでしょう。

 

補償の請求期限

損害賠償請求権の時効は、損害及び加害者を知った時から3年または不法行為から20年と規定されています。事業損失では「工事完了後から1年以内に請求のあったもの」と規定されています。これは因果関係の判定を容易にするためで、これ以降に関しては損害賠償請求として対応する事になります。

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