このように損害賠償は民法の規定で有るのに対して、事業損失は単なる行政側の手続き規定です。
でも、実態はほとんど損害賠償に近いもので、「どのみち賠償しなければならないような損害を与えたのであれば、先に費用負担しましょう」といったものです。ですから事業損失で救われなくとも、別途、損害賠償の請求を行う事が出来ます。
損害賠償と事業損失の大きな相違点を以下に示しました。
対象となる損害
先にも述べた通り、事業損失では無形的な損害は対象としませんが、損害賠償請求では慰謝料等の請求が認められるように、民法上では広く法律上保護されるべき利益で、損害の有形無形を問いません。逆に事業損失では、交通騒音の防音工事や電波障害における有線施設の設置のように、損害の起こる前に補償(費用負担)出来ることが特徴です。(損害賠償では「損害の発生」が不法行為の成立要件ですので、損害の発生以前に賠償請求をすることは出来ません。)
挙証(立証)責任
事業損失では被害者救済の立場から損害の発生や因果関係の立証は起業者側が行うのに対して、損害賠償では被害者側に挙証責任があるので、賠償を認めさせるには実際はかなり厳しいでしょう。
補償の請求期限
損害賠償請求権の時効は、損害及び加害者を知った時から3年または不法行為から20年と規定されています。事業損失では「工事完了後から1年以内に請求のあったもの」と規定されています。これは因果関係の判定を容易にするためで、これ以降に関しては損害賠償請求として対応する事になります。