原理と測定方法は何れも同様なので、ここでは主に水盛管による測定方法を中心に解説します。
沈下測定の原理は、図-1のように仮想水平線から各測点までの距離を測定して、床面の沈下状況を測定します。
戸建住宅の沈下測定は、”不同沈下”を測定するのであって”絶対沈下量(総沈下量)”を測定するものではありません。これは直接基礎の建物においては基本的な考え方です。
”不同沈下”は、建物内の最も高い点を基準(±0)に、各点の高さの差(高低差)を出すものです。(最も高い点を基準にすれば全てマイナスになります)但し、体育館のように間仕切りもなく、床に段差がなければ簡単ですが、既存住宅では見通しが利かず、各部屋の床には段差があるので、ここが測定のポイントとなります。このため、見通しの利かない既存住宅では、水盛管が便利なのです。水盛缶に10mのホースを取り付ければ、通常の住宅であれば一連の測定で結果が得られます。
レーザーレベルは、設置が簡単で家具越しに測定が出来るなどの長所がありますが、見通せる範囲しか一回の測定で測定が出来ません。レーザーレベルを使う場合は、必ず盛替えを行い全ての測定を連続させ、建物全体の沈下傾斜の状況が把握出来るようにする必要があります。
1)段差の処理と測定方法
床に段差がある場合は、図-2のように段差分を補正し、フラットな床面を想定して高低差を算出する必要があります。段差Δは敷居などの厚みをスケールで直接測定するか、水盛管を用いて段差の前後の測定結果から「段差Δ」を測定します。水盛管や水管の場合、水位が適切な高さとなるように器具を設置し、適正な姿勢で測定する事が重要で、水位の測定は図-1右上○内に示すように、同一水面を統一して測定する必要があります。ホース内に気泡が残ると測定誤差が生じますので、設置に際しては良く点検する必要があります。
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