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【振動被害のポイント】 |
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- 振動エネルギーは地盤を伝播中に減衰(距離減衰)しますが、一般の木造住宅では建物内に振動が伝わると5〜10dB程度増幅(共振増幅)します。
- この増幅特性は地盤と建物の周期が一致すると起こります。必ずしも古い建物だけが揺れやすい(共振し易い)わけではありません。
- 振動による損傷発生は「建物の揺れやすさ」と「建物の変形しやすさ」によります。
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距離減衰(基準点レベルと到達レベルの差)や共振増幅率(到達レベルと応答レベルの比)を求める事、応答レベルによる変位量と障害程度を調べる事により振動被害を判定する事が可能です。
詳しくは「振動被害の被害判定手法」をご覧下さい。
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(2)住宅振動障害の損傷形態 |
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振動による損傷は前述のような経緯で発生するので、振動被害の条件は「変形が生ずる下地で尚且つ変位に追随できない靭性の乏しい仕上げ面に損傷は発生する」事にあります。
振動被害は居住者の被害感が強く、また経年変化と類似している事もあり混同されがちですが、振動被害の発生経緯を考えれば、損傷形態も異なった傾向が有る事が理解できます。私たちが調査した「振動による純然たる建物の損傷」を分析した結果、損傷形態は以下の通りです(振動被害)。
なお、振動による被害の申出(クレーム)の発生率と比較してみました。これによれば、前述の振動被害の条件を良く表しています。代表的な振動被害と言われているタイルの亀裂は、クレームの発生率に比べて非常に低く、建具の建付不良の発生もクレームの発生率に比べてほとんど無い事がわかります。また、基礎の亀裂に至っては全く見られませんでした。
これは振動被害の経緯と発生条件からすれば、軸組みに変位が残らない工事振動レベルでは、これらの損傷が発生しない事は当然と言えます。
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表-1 振動による損傷ベスト10
順位 |
損 傷 形 態 |
振動被害 |
クレーム |
1 |
外壁(左官湿式)の亀裂及び崩落 |
24.0% |
25.5% |
2 |
内壁(左官)の損傷び崩落 |
11.2% |
11.3% |
3 |
タイル類の亀裂又は崩落 |
9.0% |
20.2% |
4 |
内壁(乾式)の損傷 |
5.7% |
3.2% |
5 |
内壁の散りきれ |
3.0% |
9.0% |
6 |
タイル類の目地切れ |
2.2% |
9.9% |
7 |
外部コンクリート舗床の損傷 |
1.9% |
-% |
8 |
建具の建付不良または開閉不良 |
1.7% |
25.2% |
9 |
コンクリートブロック塀等の損傷 |
1.5% |
-% |
10 |
外壁(乾式)の損傷 |
1.4% |
3.8% |
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(3)障害と振動レベル |
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振動レベルと人や建物への影響との関係を表-2に示しました。本来、建物の障害は物理量である加速度との関係ですが、公害振動測定では感覚補正された振動レベルを用います。
振動レベルと建物への影響を直接比較するのは難しいのですが概ねの傾向は伺えます。一般に建物の構造上の問題が生ずるのは95dB程度、壁等に損傷が生ずるのは85dB程度と考えられていますが、脆弱な建物等、個体差を考えれば80dB程度です。(但し、これは地震などの比較的振動数の低い場合の安全側の値で、これに比べて工事振動の振動数は高く、損傷が生じるレベルはもう少し高くなると考えられます。)
特定建設作業規制値75dBは地表面での値ですので、建物内の増幅(10dB)を考えれば規制値以内でも損傷が生ずる可能性がある事が分かります。地表面での損傷を発生させない値は65(最大)〜70(標準)dBと考えるべきです。
一方、振動に対する苦情の発生は60dB、65dB程度で多く発生します。大きな揺れを感じれば建物にもに何か損傷がでると考えるのは普通で、苦情が発生するレベル(60dB)と建物の損傷発生レベル(70dB)の差が、問題を複雑にしているのです。
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表-2 振動レベルと障害の関係
振動レベル |
加速度 |
気象庁震度階 |
人や建物影響 |
55dB以下 |
0.8gal |
0 |
人はほとんど感じないレベル |
60dB |
1.25gal |
I |
睡眠への影響レベル |
65dB |
2.5gal |
苦情の発生レベル |
70dB |
4gal |
II |
増幅を考えた場合の損傷発生の下限値 |
75dB |
8gal |
特定建設作業規制値 |
80dB |
12.5gal |
III |
建物内部での損傷発生の下限値 |
85dB |
25gal |
建物の損傷発生 |
90dB |
40gal |
IV |
人体への生理的影響の下限値 |
95dB |
80gal |
耐震性の低い住宅で壁や柱が破損 |
※振動レベルと加速度及び震度階は直接換算できないのでこれらの比較はあくまでも目安です。
※本来、表-2の振動レベルの換算値は振動加速度レベルの値ですが振動数を4〜8Hzと仮定して振動加速度レベル≒振動レベルとしています。
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(4)振動レベルの評価 |
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公害振動の測定単位には振動レベル(dB)を用います。これは主に人への影響度を基盤にしているためで、対数尺度を用いて、尚且つ感覚補正した値です。
しかし建物の被害については物理的な現象ですので、物理量である加速度を用いた方が適当です。
また、公害振動の評価ではL10(80%レンジの上端値)等を用いますが、建物被害では最大値の発生時点で瞬時に損傷が発生すると考えられるので、最大値を扱うべきです。
このように扱うべき尺度が異なるので、特定建設作業や道路振動の測定結果をそのまま採用するには無理があり、実測の生データを参考に別途の分析(感覚補正の解除と最大値の検出)が必要になってきます。建物被害を目的に振動測定を行う場合は、少なくとも振動加速度レベルで出来るだけ長時間測定して、最大加速度値を把握する事が必要です。
振動レベルと振動加速度レベルの関係は、地震(5Hz以下)や建物卓越振動数(4〜8Hz)の付近では余り差が生じませんが、これより振動数の高い工事振動では差が大きくなります(振動レベル<振動加速度レベル)。
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表-3 振動の尺度
尺度 |
単位 |
説明 |
振動レベル
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dB
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振動加速度レベルに感覚補正した値(感覚補正値8Hz→-0.9dB)
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振動加速度レベル
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dB
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振動加速度レベル=20log10(加速度/10-3)
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加速度
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gal
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1p/sec2=1gal 1G(重力加速度)=980gal
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※その他にも変位振幅(o)や速度(o/sec)を用いる場合もあります。
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(5)繰り返し振動による損傷 |
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私達は、建物の損傷は最大振動時に瞬発的に損傷が生ずると考えます。レベル的には上述のように建物内でかなり安全率を見て80dB程度を損傷発生の下限値と考えます。
一方、長期間振動が繰り返された場合、低レベルでも金属疲労的に損傷が生ずるとの意見もあります。確かに航空機や工作機械等では重要な問題で、実験による疲労曲線(S-N曲線)から疲労限度を求めることが行われていますが、ここで損傷が問題となる建物の仕上げ部でのS-N曲線を求めた事例は多くありません。これは、損傷の多くはタイルやモルタル等、弾性領域が狭く塑性的に損傷するものがほとんどなので、弾性的な疲労損傷を大きく捕らえる必要は無いためと考えらえられます。
文献調査の結果では、部材によって様々ですが、大きくても0.3倍程度までの耐力低下であり、通常設定する安全率を含めた損傷限界を考えればその範囲内で繰り返し振動の影響も考慮していると言える考えます。
また、仕上げ材等に損傷がなくても問題となるのは構造部位等で「繰り返し振動によって建物がおかしくなった」などの概念的な苦情でしょう。以下に疲労曲線から考察した文献に示されている事例を紹介します。
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「振動規制技術マニュアル」環境庁大気保全局特殊公害課編 ぎょうせい より
第3章 振動の影響 3.1.3振動の繰り返しによる家屋の疲労(抜粋)
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「1回の衝撃、あるいは1日の連続振動で家屋に見える被害は起こらなくても、振動を毎日繰返せばそれが累積して家屋の強度を下げるのではないかとの議論はよく行われることである。(中略)
木材で構成される家屋に振動による局部破壊の始まるレベル100dBを基準としその1/6〜1/7に鋼材と同じく安全を含めた耐久限度があるとすれば、85dBとなる。また、木材接手の疲労限度がでていないので、右図において繰り返し数に応じてそのまま強度も低下するものとすれば、図中破線で示したようになり応力が1/3まで低下するのに1010回を必要とする事になる。1010回とは1秒に5回の繰り返し負荷ならば休み無く60年間受けることを意味するがこれは木造家屋の法定耐用年数30年を超えてしまっている。
以上の2つの方法で振動の繰り返しによる木造家屋の疲労を検討したが、何れの方法でも規制基準(75dB)で行われるレベルでは繰り返しの影響が出るとの結論は出てこない。」
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「繰り返し振動の影響」については技術情報かわら版第93号 第94号で紹介しています。 |
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